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展覧会

第10回企画展

「水辺の記憶」

2023年9月2日〜2024年7月27日 毎週土曜日

2月/8月は休館。年末年始は休館.​。

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▲船と工場

​水面に画家は何を見たか?

永井潔の風景画について、絵画修復家の山領まり氏はかつて、「その風景の中を歩けるような気がする」と評しました(当館撮影の動画より)。それは、写実的であるという以上に、まるで画家の隣で同じ陽射しを浴び、同じ風に吹かれているような体感を呼び起こされるからではないでしょうか。画中には、その眺めを前にした、画家の思いさえ記憶されているのかもしれません。

今回は、そんな永井の風景画の中から、水辺を描いた作品を34点選び、展示します。

海を描いた作品は18点。『寺泊海岸』(1939年/油彩)は戦時下、兵役の合間に描いたもので、砕け散る波しぶきが時代に翻弄される青年の心を象徴しているかのようです。『網代港』(1968~9年頃/水彩)、『土肥の海辺』(1991年/油彩)、『海辺の家』(制作年不明/油彩)からは、洋々と広がる海のもとにつましく立つ家々や漁船が、その地に生きる人々の暮らしを想起させます。『ゴミを選る人々』(1960年/油彩)は、横須賀湾に面したゴミ捨て場に通って描いた異色作で、高度成長期を支えた人々の働く姿が印象的。ほかにも、伊根、房総、佐渡の風景など、海に寄り添う人々の営みに向けた画家の視線がやわらかです。

川を描いた作品は10点。『川べりの工場』(制作年不明/油彩)、『船と工場』(同)は、町工場と地元の川の密接な関係を物語ります。住宅街の川と民家ののどかな共生をとらえた『川べりの木立』(同)、コンクリートに囲まれた『堀割のある風景』(1969~70年頃/油彩)からは、失われた自然を惜しむ眼差しも感じられます。ほかにも、12歳で描いた八木ヶ鼻・五十嵐川の絶景、氷見の上庄川、下津井を流れる川など、各地の姿を映して流れる川に永井は絵心をかきたてられたようです。

 池、湖、水田を描いた作品は6点。涼感漂う『石神井公園三宝寺池』(1960年/水彩)、『水辺の東屋』(制作年不明/水彩)、少年の姿が微笑ましい『秩父の魚つり』(同)、『下野風景』(1986年/水彩)の水の恵み、『The water side』(1972年/リトグラフ)の春まだ浅いクールな水面。そして、『水面に映る木立』(制作年不明/油彩)は絵の大半が水面という、まさに「水面」そのものを描く試みだったと言えるでしょう。

さざ波に揺れながら逆さまに映り込む現実の虚像―――「反映」を描くことは、永井潔が生涯魅せられ続けた画題でした。そんな彼の思いが宿る「水辺の記憶」の数々をどうぞお楽しみください。

  同時展示 

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期間中、館内1F「絵のあるカフェ」では、『飛ぶ教室』(1967年/偕成社)の挿絵原画を展示します。ケストナーがナチス支配下のドイツで描いた少年たちの友情と冒険。彼らを応援するかのように、永井潔の筆遣いも躍動しています。

◀︎永井潔 挿絵原画

​『飛ぶ教室』(ケストナー作

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第1回企画展 永井潔アトリエ館オープン記念

​永井潔のすゝめ

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2017年4月​15日~7月29日

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